転倒

転倒事故とは

転倒

 介護施設における転倒事故とは、施設内で入居者や利用者が転倒し、骨折や頭部外傷などのけがを負う事故をいいます。
 高齢者は加齢による筋力低下やバランス感覚の低下、持病によるふらつき、認知症による判断力の低下など、転倒リスクが非常に高い状態にあります。そのため、介護施設では「転倒事故は避けられない」とする見方が根強く存在します。

 しかし実際には、多くの転倒事故が適切な配慮と介護体制によって予防可能なケースです。施設側が利用者ごとの転倒リスクをきちんと評価し、必要な見守りや環境整備、福祉用具の活用を行っていれば、防げた事故も少なくありません。

 さらに、転倒事故の被害は軽視できません。骨折による寝たきり化や長期入院がきっかけとなり、全身状態の悪化や死亡に至る場合もあります。にもかかわらず、事故後に施設から十分な説明がなかったり、「不可避の事故」として責任を回避されたりするケースも多く、ご家族としては大きな不信感と不安を抱えることが珍しくありません。

よくある転倒事故ケース

 転倒事故で典型的に見られるケースとしては、次のようなものがあります。

1 歩行時の見守りなし

 まず、「見守りや介助が不足していた」ケースです。歩行時やトイレへの移動時、本来は職員の付き添いや見守りが必要であったにもかかわらず、一人で移動させたことで転倒した、という事例が非常に多く見受けられます。

2 ベッドや乗り物からの転落・転倒

 次に、「ベッドからの転落」や「車椅子での転倒」「車いすからの移乗転倒」です。特に夜間や職員が少ない時間帯に、ベッド柵が適切に設置されていなかったり、起き上がりを察知するセンサーが作動していなかったりするなど、管理体制に問題があるケースがあります。

3 転倒しやすい環境

 また、「室内の環境整備不備」も重大な要因になります。たとえば床の滑りやすさ、段差の放置、照明不足などにより、利用者が転倒してしまうこともあります。さらに、「適切な福祉用具が使われていなかった」ケースもあります。歩行補助具が合っていなかったり、職員が適切な介助方法を理解していなかったりすることで、事故が起きるリスクは高まります。

 こうした事故では、施設側のリスク評価や介護計画に不備がなかったか、記録や管理体制が問われることになり、弁護士のサポートによって責任の追及が可能となるケースも多いのが実情です。