徘徊

徘徊死亡事故とは

徘徊

 介護施設における徘徊死亡事故とは、認知症などの症状を持つ利用者が施設内や敷地外に出てしまい、事故や環境的要因によって命を落とす事態をいいます。
 徘徊は認知症の代表的な症状のひとつであり、「自分の居場所がわからなくなる」「目的もなく動き回ってしまう」といった行動が見られます。

 そのため、介護施設においては徘徊リスクの高い利用者について特段の配慮が求められます。たとえば出入口の施錠管理、位置情報管理、職員の配置や巡回体制など、安全を確保する措置が当然必要とされます。

 にもかかわらず、こうした対策が不十分であった結果、利用者が施設外へ出てしまい、交通事故や溺水事故、熱中症や低体温症といった環境要因で死亡に至る事例が後を絶ちません。

 ご家族にとっては、「なぜ施設に預けていたにもかかわらず、このような悲劇が起きたのか」という思いが募るのは当然であり、法的責任の有無を明確にしたい、再発防止を求めたいと考える方が多くおられます。

よくある徘徊死亡事故ケース

 徘徊死亡事故でよく見られるケースとしては、以下のようなものがあります。

 まず、「施設の出入口が適切に管理されていなかった」ケースです。自動ドアが常時開放状態だった、職員の目が届かない出入口が存在していた、鍵が壊れたまま放置されていた、鍵が簡単に開錠できるものであったなど出入り管理の不備が原因で施設外に出てしまう事故が発生しています。

 次に、「認知症の進行度や徘徊傾向がきちんと把握されていなかった」ケースも目立ちます。介護計画の更新がなされておらず、家族の申告も十分に反映されていないまま、徘徊の兆候が見逃されてしまったという事例が多く報告されています。

 また、「夜間の巡回が不十分だった」「職員の数が不足していた」といった人的な問題も背景にあります。特に夜間や休日など、職員の配置が手薄な時間帯に発生することが多くなっています。 さらに、外部に出た後の捜索が遅れたり、警察への通報が適切に行われなかったことにより、救助が遅れて死亡につながったケースもあります。こうした場合、施設の初動対応や危機管理の問題が法的責任として問われることになります。