薬誤投与事故とは

介護施設での薬誤投与事故とは、利用者に処方された薬が誤った方法で投与されたことにより健康被害を引き起こす事故をいいます。
高齢者は多剤服用(ポリファーマシー)の状態にあることが多く、毎日複数の薬を服用しているケースが一般的です。そのため、介護職員や看護師が服薬管理に十分な注意を払わなかった場合、ミスが生じるリスクが高まります。
薬誤投与の影響は重大であり、たとえば抗血栓薬や降圧薬、インスリンなどの強力な薬剤が誤って過剰投与されたり、服用すべきでない入居者に投与されたりすると、出血、低血圧、低血糖発作など命に関わる事態となることもあります。
こうした事故は、単なるヒューマンエラーとして片付けられるものではなく、施設側の管理体制の不備や教育不足、記録管理の杜撰さが背景にあることが少なくありません。
よくある薬誤投与事故ケース
薬誤投与事故で多く見られる事例は次の通りです。
1 他者の薬の誤投与
もっとも典型的なのは「他人の薬を誤って投与してしまった」ケースです。薬の袋やトレイの管理がずさんで、誤って別の利用者の薬が配布される事故が発生しています。
2 用法用量違い
次に多いのが「用量の間違い」です。1日1回の投与が2回行われたり、本来休薬すべき日に投与されたりするなど、誤った用法用量で薬が投与され、健康被害に至る事例があります。
3 その他
また、「新しい処方への変更漏れ」や「医師の指示ミス・看護師との連携不足」も背景となることがあります。介護現場では、処方変更があったにもかかわらず旧来の薬がそのまま投与された、という事故が後を絶ちません。
さらに、「薬の服薬介助時に十分な確認を行わなかった」「職員間の引き継ぎ不足による誤投与」など、組織的な問題も多く関与していることがわかります。こうした状況がある場合、施設側の責任追及が可能となります。